Column

2014.09.04 Thu

コメンタリー: 11. 橋からの眺め

古今東西南北、橋を題材にした曲は多いですね。スカの名曲 Bridge View(これは地名だと思う)、キンクスは Waterloo Sunset、A View from the Bridge なんてのもある。大体僕も含めて人はやりきれなくなると橋のところをぶらぶらするようで、そんな「橋」ソングの系譜にこの曲は入れてもらえるのだろうか …
レゲエもブルースも好きだけど、音の構造にはずいぶん違いがある。表わしている気持ちには共通するものを感じても、それを成り立たせている勘どころはたまに正反対な場合すらある。特に、レゲエに特有の「ど」マイナーキーによるブルース感覚、みたいのは、メジャーキーのポップソングが好きな北村にとっては扱いの難しいものだ。Taj Mahal を聴くとそれがいとも簡単に超えられているのに感激するのだけど、聴くとやるとは大違いで、Taj Mahal がさらっとそういうことをやっているから自分もそういう曲を作れるような気になると、めちゃめちゃ苦労することになる。… みたいなことがこの曲を作っていた時に思ったことだった。
でも、意外にこの曲は「育った」かもしれない。北海道 RSR フェスの草むらで、大阪カレー屋のちゃぶ台の上で、演奏した時の何かを、曲の方も吸い取って帰ってきているのかもしれない。
この曲の録音は今はなき神楽坂の「シアターイワト」で録らせてもらった(神保町「スタジオイワト」さんとは別)。時期もこのアルバムの中では次の曲、Accustomed に次いで古い時期に録音した。ミックスもアルバム中で一番早く、テスト的にミックスしたものをそのまま使った。なので録れた音はいろいろでこぼこしていたのだが、m’s disk 滝瀬さんのマスタリングを施された瞬間に、何かが完成した。滝瀬さんの話では、既にぎっしりと詰め込まれ、低音も高音もトリートされ尽くしたミックスよりも、でこぼこの残っているものの方がやり易いそうだ。その、パッと拡らける感じは「知らない家」の次に合うかも、と思って、試しにやってみたら、予想以上の感じがあった(当初は別の曲順にする予定だった)。まあもちろん「知らない家」で橋まで行ったから、次はそこから眺める、というのもある。
こういうことは、良くなかったことよりももっと、覚えておくべきことなのだろうが、それを次に活かすことは、反省することよりも難しいね。