ザ・スライ(アンド・ザ・ファミリーストーンの方ね)ベースライン!下北はいつでも下北、ロックの街でもこんなビートの時もある。ひと月過ぎたけどこの季節は、よく夕暮れ前に空を見る。一面に拡がった雲を見る。
アルバム制作初期の見込みでは、割とどの曲もこのような一発録りスタイルになるつもりだった。リズムボックス(ただし手作り音色がアナログ同期で加えられている)に、ベースもコードもメロも同じテイクで演奏・録音というやり方だ。実はベースラインは、曲の途中で左手から足鍵盤に移っている。
当初は一発録りだから簡単だろうと思っていたのだが、自分が思う演奏のニュアンスをクリアすることと、テイクとして人に伝わる腹の据わったものであることとのバランスを取る上で、タイミングや強弱、音符の長さといった演奏ニュアンスの部分は一発録りだからといっておろそかにしたくなかった。逆に人に伝わるふんわりした感じとか腹の据わった一期一会の感じとかは(その人その演奏の問題であって)必ずしも一発録りすれば出る、というものでもないだろうと思えてきた。
それでレコーディングの後期からは普通のダビングで作るという、ある意味逆行したやり方に戻したりした。さらにややこしいことに、そのやり方でかなりの曲を録ったあとで「やはり一発録りしよう」と思って録ったのかこの曲だった。
… などなど、「遠近(おちこち)に」の曲たちは、ふんわり録っているように見えて実はそうではない。それが良いことであったかどうかはわからないが、世にある「ふんわりしたやり方を採ればふんわりした音楽ができる」という考え方は結構ウソなんじゃないかなあと、実感として思っている。