COVERS 2003 のオリジナルリリースである3枚の7インチシングルは、2003年の9月から11月にかけて、Small Circle of Friends のレーベルである basque から発売されました。魅力的な二人組である Small Circle of Friends は、当時僕がサポートしていた Hicksville やその周辺のバンド・ミュージシャンと一緒に「Holiday」というイベントを行っていて、都内だけでなく大阪にもツアーしました。心斎橋(!!)のクラブクアトロでイベントを行って、確か僕はライブの他にも開場時にオルガンによるBGM演奏をしたと思います。当然ながら今でも活発にライブやリリースを行っている彼らの活動にも、ぜひご注目ください。
この7インチシリーズを出した頃は、クラブミュージックというくくりでDJやトラックメイカーから提示される音楽が「新しい」ものとしてバンドシーンにも力を与える、という’90年代からの流れが、それまでに比べても一層拡がった頃だったと思います。しかしながら、COVERS 2003 に収録された=当時発売された7インチの曲たちに、当時の「先端」感はあまりないです。サンプリングもなく、エッジの効いた音作りもなく、リリース時点で「エマーソン北村」に期待されたと思われるサウンドよりは、ずいぶんパーソナルで、ざっくり言って「地味な」印象だったのではないかと思います。もちろん当時から、こういうサウンドを「ローファイ」な「質感」として特徴づける言い方もありましたが、それを狙って作っているのでないことは聴いていただければわかると思います。
当時の「先端」を目指して作られた曲たちだったら、今回 COVERS 2003 としてリリースされるにあたってもっと「古さ」を感じたかもしれないんですが、この数ヶ月リリースのために繰り返し音源を聴いていても、二十年前ではなくて数ヶ月前の録音と錯覚してしまう瞬間があるくらい、その辺はあやふやです。それを「オールタイム楽しめる良い音楽」と感じるか「時代感のない、つまらない音楽」と評価するかは聴く人それぞれで良いと思うのですが、なぜ僕の作るトラックはそうなるのか、自分なりに考えてみました。
今回の音源に限ったことでないのですが、僕の作る音楽には、常に「新しい・外からの音楽要素」と「自分自身の内にあるもの」との間の距離感というか、距離を測りたくて測れないような違和感が、常にあると思います。もっと簡単に言うと、「こういう風にやりたい!」と思う気持ちと「自分はなぜこうやりたいのか」という引っかかりとが常にせめぎ合ってしまう、ということです。
それにはいろんな理由があって、また機会があればもっと考えてみたいですが……(続く)