このコメンタリーは2曲目から始まって、その後はアルバムの曲順通りに書いている。そして、ここでカバー曲が登場することになる!
イギリスのロッカー、イアン・デューリーがブロックヘッズに先だってやっていたバンド、キルバーン・アンド・ザ・ハイローズが1974年に録音したアルバム「Handsome」から。後のパンクやパブロックにつながるロックンロールなのにレゲエやカリプソ、’50年代のポップスやムードミュージックがふんだんに取り込まれていて、要は、もし北村が歌を歌えたらこういう音楽をやりたいと思わせる、ど真ん中のアルバムだ。イアン・デューリーの音楽が素晴らしいところはパーティー音楽であることを外さないのに、歌はどこか寂しげだったりするところ、言い換えれば、言葉に非常な重きを置いているのに言葉だけでは成り立たず、バンドのビートがあってはじめて伝わる言葉を書いていることだ。江戸アケミさんの the most favorite ヴォーカリストだったりもする(余計なことだが、JAGATARA のファンならばこういうところを押さえて欲しいのだ)。The Call-Up という題名も中心的な意味は「徴兵」だと思うが曲中ではいろんな意味が重なっていて英語と日本語を一対一では訳し切れない歌詞になっており、それがカリプソディスコに乗ってサックスが炸裂し、パンが受け、コーラスがまとめる、などなどなど、ああ素晴らしい。The Call-Up という題名自体は The Clash にもあったけど別曲ね。
北村のヴァージョンは素直に、そのオルガンヴァージョンをやったということ。このアルバム制作のかなり早い段階で、当時神楽坂にあったシアターイワトを使わせていただいて、オルガンをダビングした。オルガンは日本製のハモンド X-3。ハモンドオルガンのハードに関するオーソリティである山本力さんに長年面倒を見てもらっている楽器で、この曲ではなぜか予想以上に音が抜けたな。
トラックの方針は、16ビートとか知らないドラマーがパンパンに張ったスネアを叩くサウンドと、BOSS DR-110 という’80年代リズムマシンのサウンドの合体。イントロのキックがフェーダーで持ち上げられるというのはオリジナルへのオマージュで、マスタリングの際 M’s Disk の滝瀬さんにわがまま言って、やってもらった。