Column

2021.10.01 Fri

北村のCOVID感染と、シアターブルックでの活動の無期限休業について

いつもシアターブルックとエマーソン北村の活動を応援してくれて、ありがとうございます。

公表されているように、僕は8月4日にCOVID(新型コロナウイルス感染症)を発症しました。肺炎を併発して中等症Ⅱまで進み、入院を要する重いものでした。現在も自宅で体力の回復と後遺症の防止につとめており、医師によれば身体が完全に元に戻るには数ヶ月ないし半年かかるだろうと言われています。

発症の4日前となる7月31日、シアターブルックは千葉県いすみ市でイベント Forest Jam に出演しました。この日のライブは、ほとんど感染対策がなされていないと言ってもいいほどの「ユルい」もので、多くのお客さんが密集して大声をあげ、その半数近くがマスクをしておらず、またそれを注意する人もいないという状況でした。このイベントが僕のCOVIDの感染原因だったという確実な証拠はありませんが、イベントと発症のタイミング・僕はその前後の日々はライブ以外に外出していないこと(8月1日にもシアターブルックのライブがありましたが、こちらはきちんと感染対策がなされていました)・そして何よりイベントの状況から見て、僕のCOVIDとこのイベント出演とに、何らかの関係があったと考えざるを得ません。

僕は、ライブ本番になるまで、このイベントがこのような雰囲気のものだということを知りませんでした。多少の不安はありましたが、シアターブルックがバンドとして決めたライブだからということで、いつもと同じように参加しました。しかし残念なことに、リーダーである佐藤タイジ氏をはじめバンドの意思決定の中心となる部分は、主催者側に感染対策を求めるでもなく、本番が始まって密集がひどくなってもそのままで、むしろ一部のメンバーは「マスクなしライブ」をお客と一緒になって楽しむ雰囲気さえありました。もしこのようなイベントを「あり」とする雰囲気がバンドの活動方針にあったとすれば、それは僕には到底認められないものです。

僕はこの感染によって、自分がCOVIDで苦しんだだけでなく、看病した同居のパートナーまで感染・発症させてしまいました。また僕の感染が原因となって延期となった、他アーティストのライブもあります。音楽を演奏することによって他人を傷つけ損害を与えるということは絶対にあってはならないことです。従いまして、

僕、エマーソン北村は、今後のシアターブルックの全活動を、無期限休業とさせていただきます。

無期限は重すぎるという考えもあると思いますが、僕は35年に渡るライブ歴の中で、どんなハチャメチャなライブをしても絶対に他の人を傷つけない、ということが誇りでした。この日のイベントは、当時の千葉県の感染状況やオリンピックなどの背景もあって、たまたま「ノリ」でこういうものになったのかもしれません。しかしライブは「ノリ」のものだからこそ、気遣いと即応力が必要なのです。そのためにシアターブルックがバンドとして、普段からコロナの現実をしっかり見すえた姿勢をとって、メンバー・スタッフの不安や懸念を全員で解決するようにしていれば(このコミュニケーション不足は僕も反省するところです)、少なくとも僕の2か月にわたる、そしてこれからも続く身体・精神・家計のダメージは全く違ったものになっていたことでしょう。また、Forest Jam はじめ全国のインディなイベントの主催者たちには、未だに大規模な検査を行わずクラスター対策中心の発想しかしてこなかった国の方針に流されることなく、インディならではの科学的で実効性のある感染対策をみずから行なって、活動を続けてほしいです。それは規制だらけのものではないでしょうし、同時に決して「ユルい」ものでもないはずです。

たった一回のライブのために今まで培ってきた演奏のコンビネーションを無きものにすることは心苦しいですが、たった一回のライブだからこそ、それを通じて起こってしまったことの結果は、僕を含めて関係者の誰もが見据え、正面から受け止めなければならないと思います。
その結果は、シアターブルックでの僕の演奏を楽しんでくれた皆様にとって、そして何より自分自身にとって非常に残念なものになってしまいましたが、どうかご理解いただけますよう、ここに発表いたします。

2021年10月1日 エマーソン北村