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2024.01.05 Fri

COVERS 2003(11)カヴァー曲紹介 A2 Green Dolphin Street

COVERS 2003 A2 Green Dolphin Street (Bronislaw Kaper-Ned Washington)

たぶん収録曲の中で一番有名な曲だと思うが、僕にとっては一番なじみのない曲だった……僕はメインストリームのジャズを実践する場にいたことがまったくなくて、このような曲を人から教えてもらうといった、普通のミュージシャンなら若いうちに経験するはずのことが、すっぽり抜けていたりする。音源を聴いても、慣れないジャズ的な表現に苦しんでいるのか、たどたどしいところがたくさんある。ただ、有名曲という認識がなかっただけでこの曲をやりたくなかったわけではなく、むしろ「良いマテリアルを見つけたぜ!」と一人で喜んでいた。そんな経緯やドラムのフレーズ(まただ)などからして多分、COVERS 2003の全体を通して最も1990年代感をかもし出しているトラックなのではないかと思う。でもライブでは喜んでくれる方が多い。自分が気になるポイントというのはいつも、単に自意識のなせるものだからなあ……

とにかく、どうやってGreen Dolphin Streetを見つけたかというと、Lou Bennettというオルガンプレイヤーのアルバムでだった。USで活動した後フランスに渡り、そのままずっとヨーロッパで演奏し続けた人だそうだ。改めて彼のレコードを聴いてみると、僕がやっていることはグルーヴが違っているだけで、かなり「そのまま」だ。彼の演奏は音色がいいです。機材的な話で恐縮だが、オルガンといえば回転スピーカ(レズリースピーカという)を使って熱くステレオワイドに拡がる音、というのが最も「らしい」演奏とされているけど、僕にはあまり興味がない。この演奏のようにほとんどスピーカを「回さない」素のような音にむしろグルーヴが感じられて、とても好みだ。1990年代の日本で1960年代のオルガンジャズを再評価する動きがあり、僕も一時期だけ結構マニアックにレコードを買った。そのマニア心が行き着いて取り上げた一曲、と思っていただけたらありがたいです。

Lou Bennett – AMEN (1960)